例えば不動産信託。
契約者向けにつくらなければならない資料の規定が厳しくなった。
信託業界には「本人が所有する不動産を信託する場合は資料を簡素化する代わりに手数料を割り引く」という慣行があった。
だが法改正で本人向けにも膨大な資料が必要になり、手数料の割引も難しくなる。
04年12月末の証券取引法の改正。
煩雑だった「投資信託の目論見書」に関する規制がわずかながら、緩和された。
ところが投資信託を販売する証券会社は「かえって負担が増えた」と嘆く。
だが、慌てたのは投信を販売する証券会社や銀行だった。
請求目論見書を投資家に渡したかどうかを管理するために、システムを大幅に改良する必要に迫られた。
証券各社は金融庁に陳情。
結局、金融庁は「交付」と「請求」をまとめた「合冊」の目論見書も認めた。
N 証券は運用会社に合冊をつくるよう要請した。
業界最大手で N 系の N マネジメントが合冊を発行、これを機に合冊が当たり前になりつつある。
合冊は重複する内容も多く、資料づくりは規制緩和前より煩雑になった。
運用会社は販売会社に大型トラックで目論見書を運ぶようになったという。
資料づくりのコストが3倍になって「コスト増は何らかの形で投資家に転嫁せざるを得ない」と大手証券系の運用会社は打ち明ける。
投資家の利益を守り、運用会社のコスト削減につなげるはずだった規制緩和。
運用会社のコストは増し、投資家は知らないところで割を食うかもしれない。
「損保がこれほど頑強に抵抗するとは思いもよらなかった」。
2005年6月にようやく決着した保険の銀行窓口販売の追加解禁。
ある金融庁幹部はため息混じりに議論を振り返った。
04年春。
金融審議会(首相の諮問機関)は保険の銀行窓販について「05年春から段階的に解禁する保険商品を増やし、07年春にすべて解禁する」と答申した。
ところが、05年6月に反対の急先鋒は損保の主力販売網である代理店の業界団体だった。
N 保険協会の H は「追加解禁の先送りは許されない」と解禁に前向きな姿勢を見せていたが、代理店の反対は収まらなかった。
金融庁は生保業界が折れれば、損害保険業界も簡単にまとまると踏んでいた。
ところが金融庁の見立てとは裏腹に、損保側は反対姿勢を崩さず、追加解禁の論議は再び迷走した。
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